地球４周分の水道管が危ないって知ってる？「水道40問題」とは

水道管劣化で受ける影響

水道管が劣化することで、漏水や水道管の破裂、サビによる赤水、自然災害による断水など、私たちの生活に関わるさまざまな悪影響が考えられます。

例えば1955年以降に設置された水道管に使われているのは、錆びやすい鋼管などです。
これらの水道管を長期間使用することで、サビによる赤水などの濁った水が出ることにも繋がります。
少量であれば飲んでも問題ありませんが、鉄の濃度が高い赤水や、大量の赤水を飲んでしまった場合は、嘔吐や下痢を引き起こすことがあります。

もう一つの大きな懸念は、自然災害による断水です。
主要な水道管のうち耐震性のあるものは、令和３年度末時点で41.2%と半数を下回っています。¹

南海トラフ巨大地震を想定した場合、最大約3,570万人が断水するというデータも。²
「東海三県の約６～８割、近畿三府県の約４～６割、山陽三県の約２～５割、四国の約７～９割、九州二県の約９割が断水する」という広範囲の被害が想定される上、断水が長期化するリスクも指摘されているのです。³

水道は、私たちが生活する上で欠かせないライフラインです。
自然災害の多い日本において、水道管の更新と耐震化は大きな課題と言えるでしょう。

なぜ水道管を交換できる見込みがゼロなのか

更新時期を迎えた地球約４周分すべての水道管を更新するには、単純計算で140年以上かかると想定され、困難を極めています。

一年あたりの管路経年化率は年々上昇する一方、管路更新率の低下が止まりません。
2016年には管路経年化率は14.8%、管路更新率は0.75%でしたが、2019年には管路経年化率は19.1％、管路更新率は0.67％となっています。⁴
このままのペースでいくと、ますます更新が遅れていくことになるでしょう。

そんな中、厚生労働省では2013年より「市街地から離れた極めて小規模な集落」への対応として、タンク車で運搬した水を送水する「運搬送水」の検討が進められています。

では、なぜ水道管の交換が追いついていないのでしょうか。
原因は、主に以下の３つです。

身体への影響が考えられる硝酸態窒素とは

硝酸態窒素は、いろいろな窒素化合物が酸化されて作られる最終生成物で、土壌や水、植物などのあらゆる場所に広く存在しています。

硝酸態窒素の活用場面として、農作物に使われる窒素系肥料があります。化学肥料の中でも生産量・使用量ともに一番多いのが窒素系肥料で、植物の生育を促す役割があります。

一方で懸念されているのが、硝酸態窒素が健康に及ぼす影響。
農地に施肥された硝酸態窒素は土壌に浸透して、地下水や河川水に溶け出します。
最終的にミネラルウォーターや水道水に混入していることも珍しくありませんが、無味・無臭・無色のため、私たちは知らず知らずのうちに摂取してしまっているのです。
日本での硝酸態窒素に対する基準値は、水道水のみに定められていますが、完全に除去するのは難しい現状があります。

硝酸態窒素がもたらす身体への影響

硝酸態窒素は、体内に還元されると亜硝酸態窒素という物質に変化します。
この亜硝酸態窒素は、体内で特定の物質と反応すると、発がん性物質や酸素欠乏症を引き起こす物質を生成します。

例えば発がん性が指摘されている物質の生成や酸素欠乏症を引き起こすメトヘモグロビン血症、乳児のメトヘモグロビン血症であるブルーベビー症候群の原因となる可能性があります。

詳しくはこちらの記事を参照　　硝酸態窒素とは？なるべく身体に取り入れない方法

近年注目が高まる有機フッ素化合物PFASとは

有機フッ素化合物PFAS（ピーファス）とは、炭素とフッ素の結合を持つ有機化合物のことです。

PFASの中でも特に、PFOSピーフォス(ペルフルオロオクタンスルホン酸）とPFOAピーフォア（ペルフルオロオクタン酸）という物質が近年問題になっています。
PFOS・PFOAは、日用品や工業製品に数多く使用されてきた過去があり、フライパンなどのフッ素樹脂（テフロン）、カーペットや紙などの保護コーティング剤、はっ水スプレー、化粧品、シャンプー、ワックス類、塗料、界面活性剤泡消火剤、航空機用作動油などがその一部です。

PFOS・PFOAは化学的に安定性が高い分、環境中で分解されにくく、生物の体内に蓄積されやすいということがわかってきたのです。水溶性、不揮発性で、環境中に放出されると、水に移行しやすいという特徴を持っており、人体への影響が懸念されています。

現在、日本各地でも目標値を超えるPFASが相次いで検出されています。
NHKが独自に調査した「ＰＦＡＳ汚染全国マップ」によると、地下水の指針値の10倍（500ng/L）を超えたところが全国で13ヶ所。その中でも大阪府・ 沖縄県・東京都が上位を占めています。
指針値を超過している公共用水域は、全国で64ヶ所。地下水では75ヶ所が指針値を超えていました。（2023年9月12日時点）⁶

厚生労働省では、2020年４月にPFOS・PFOAを「水質管理目標設定項目」に位置づけ、PFOSとPFOA合わせて１リットルあたり50ナノグラム（50ng/L）以下とする暫定目標値を設定しました。
今現在も、どれくらいの量が身体に入ると影響が出るのかなど、調査が進められている段階です。そのため、水道水中のPFOS・PFOAについて、法的な規制値を定めている国はまだありません。目標値などが設定されている国もありますが、その数値は国によって異なるのが現状です。

有機フッ素化合物PFASの健康への影響

有機フッ素化合物PFASを大量に継続して摂取した場合、発がん性や甲状腺異常など健康に影響の出る可能性があると国内の調査で報告されています。

しかし、国際的にデータが不十分であるため、日本においても引き続き毒性についての情報収集、検出状況のリサーチとともに、研究を進めていく方針を環境省は示しています。

そんな中2023年12月、WHO（世界保健機関）のIARC（国際がん研究機関）は、PFOS・PFOAについて発がん性に対する評価を引き上げました。⁷

PFOAを４段階中で最も高い「ヒトに対して発がん性がある」グループに引き上げ、PFOSを上から３番目の「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」グループに分類しました。

IARCはPFOAについて「ヒトに対するがんの証拠は限定的である」としながらも、「発がん性がある」とした根拠は次の通りです。

PFOSについて「発がん性がある可能性がある」とした根拠は次の通りです。

これらの見解を受けて内閣府では、「今後とも、IARCが公表する情報を見ながら内容の更新を行ってまいります。」としています。

また環境省はPFOS・PFOA以外のPFASに対し「存在状況に関する調査の強化等」を行うほか、既存の情報だけでなく、国内で関連する研究を進めるべきだという方向性を示しています。

国際的にも規制の動きが強まっています。
ヨーロッパでは現在、PFAS全体の製造・使用を規制する動きが進んでおり、2023年１月にデンマークをはじめとするヨーロッパ５カ国がPFASの規制案をECHA（欧州化学品庁）へ提出。規制案などを評価したのち、なるべく早く制限を決める予定です。
アメリカの素材メーカー３Mでは、2025年末までにPFASの製造から撤退し、PFASの使用を中止するよう取り組むことが発表されています。

各国での研究と調査結果を期待するとともに、未知のリスクに対して一人ひとりが自身の健康をどう守っていくべきかを考えることが求められています。

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