私たちが普段口にする食品の多くには「食品添加物」が含まれています。食品添加物には食品の腐敗を防ぐ、あるいは見た目を美しく見せるなどの効果がある一方、健康への影響が不安視されているものもあります。
本記事では、食品添加物の定義や、添加物の中でも特に注意が必要なものをご紹介します。添加物の危険性や適切な摂取量、見分け方をマスターし、健康的な食生活を送るための参考にしていただけると幸いです。
【目次】
- 食品添加物とは?
- 指定添加物(合成添加物)
既存添加物(天然添加物)
一般飲食添加物
天然香料 - 食品添加物はなんのために使われている?
- 食品添加物の表示の見方
- 食品添加物のメリット・デメリット
- メリット
デメリット - 食べすぎると危険?注意が必要な食品添加物10選
- 亜硝酸ナトリウム(発色剤)
アスパルテーム(合成甘味料)
アセスルファムK(合成甘味料)
赤色3号、赤色102号、黄色5号、青色1号、青色2号(合成着色料)
安息香酸ナトリウム
ソルビン酸カリウム(合成保存料)
OPP、TBZ(防カビ剤)
臭素酸カリウム(パン生地改良剤)
カラギーナン(ゲル化剤など)
BHT、BHA(酸化防止剤) - 添加物の複合摂取の危険とは
- 食品添加物のメリットや危険性などの正しい知識を身につけよう!
食品添加物とは?
食品衛生法上では、食品添加物は「食品の製造過程、または食品の加工や保存の目的で食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するもの」と定義されています。
日本において食品添加物は、原則として厚生労働大臣が指定したものしか使用できません。添加物として使用できるのは、指定添加物、既存添加物、一般食物添加物、天然香料のみと、厚生労働省で定められています。
使用量や成分の純度、品質などの使用基準も設けられており、それらに違反した場合は行政処分が下されます。
ここでは、日本で認められている食品添加物の種類について解説します。
指定添加物(合成添加物)
指定添加物(合成添加物)は、「食品衛生法第12条に基づき、厚生労働大臣が使用してよいと定めた食品添加物」と厚生労働省により定義されています。天然・合成などの製造方法に関わらず、安全性や有効性について食品安全委員会の評価を受け、個別に制定されます。
代表的なものとしてはソルビン酸、キシリトールなどが挙げられます。2022年10月26日改正時点で、474品目が指定されています。
既存添加物(天然添加物)
既存添加物とは、「化学合成品以外の添加物のうち、我が国において広く使用されており、長い食経験があるもの」とされています。1995年の食品衛生法改正以前から、天然添加物として使用されていたものです。これらは、例外的に指定を受けることなく使用・販売などが認められています。
この「既存添加物」という類型は、1995年の食品衛生法改正によって、指定の対象が化学的合成品から、天然物を含む全ての添加物に拡大されたことをきっかけに制定されたものです。
既存添加物名簿には、1995年の時点で、使用実績のあるものだけが記載されていました。それ以降も、審議されたのち安全性に疑いが残ったものや、使用実態のなくなったものはその都度リストから消されています。
代表的な既存添加物にはクチナシ色素、タンニンなどが挙げられ、2020年2月26日の改正時点では357品目が指定されています。
一般飲食添加物
一般飲食添加物は、食品として飲食に利用される一方で、食品添加物としても使用されるものを指します。代表的なものとしてはイチゴジュース、寒天などが挙げられ、2023年6月時点では約100品目が例示されています。
天然香料
天然香料は、動物や植物を起源とする天然の物質のうち、香りづけを目的に使用される添加物です。具体例としてはバニラ香料やカニ香料などが挙げられ、2023年6月時点では約600品目が例示されています。
食品添加物はなんのために使われている?
一般的に食品添加物には、以下のような役割があります。
・食べ物を長持ちさせる
・見た目を美しく見せる
・色や香りをつける
・味や舌触りをよくする など
例えば、ビタミンCは酸化防止剤として、食品の鮮度や品質を保つために用いられています。
酸化防止剤を使わずに食品を放っておいた場合、空気中の酸素により酸化が進み、品質が劣化してしまいます。食品の安全を守るためにも添加物は使用されているのです。役割を果たしています。
この他にも食品添加物は、かまぼこの赤い色、ソースのとろみ、ゼリーのプルプルとした食感の演出などにも使われます。こうした工夫をすることで目や舌が満たされ、いっそう食事を魅力的に感じられるようになるのです。
食品添加物の表示の見方
食品にどのような添加物が使われているかを確認したい時は、容器や包装をチェックしましょう。メーカー側には使用した食品添加物の記載が義務付けられています。
食品添加物の表示には、大きく分けて3つのパターンがあります。
1.「原材料名」欄に添加物名を記載するパターン
この方法では原材料の後ろに「/(スラッシュ)」や改行を設け、原材料名と添加物名を明確に区分します。
原材料名や添加物名は、食品に占める重量の割合が高い順に表示することを義務付けられており、前の方に表記されるほどその添加物の量は多くなります。
表示例(「/」で区切る場合):
名称:洋生菓子(ゼリー) 原材料名:砂糖(国内製造)、濃縮果汁(ももを含む)、植物油脂/ゲル化剤(ペクチン)、酸味料、香料、着色料(紅麹) |
表示例(改行で区切る場合):
名称:洋生菓子(ゼリー) 原材料名:砂糖(国内製造)、濃縮果汁(ももを含む)、植物油脂 ゲル化剤(ペクチン)、酸味料、香料、着色料(紅麹) |
2.「原材料」欄とは別に「添加物」という欄を設けて記載するパターン
このケースでも1つ目と同様、前の方に表記されるほどその食品を占める割合が大きくなります。
表示例:
名称:洋生菓子(ゼリー) 原材料名:砂糖(国内製造)、濃縮果汁(ももを含む)、植物油脂 添加物:ゲル化剤(ペクチン)、酸味料、香料、着色料(紅麹) |
3.値札やポップに食品添加物が記載されるパターン
果物などのばら売りされている生鮮食品は、袋や容器などのパッケージがないため、添加物が記載できません。そのため販売側には、消費者が購入時に判断できるようポップまたは値札に添加物名を記す義務があります。
表示例:
名称:グレープフルーツ(ホワイト) 原産国:イスラエル 添加物:防カビ剤(TBZ、イマザリル、ピリメタニル) |
食品添加物のメリット・デメリット
食品添加物には様々なメリットがある反面、健康への悪影響などのデメリットも懸念されています。
ここでは食品添加物のメリット・デメリットの両面からご紹介します。
メリット
食品添加物を使用する主なメリットには、以下の5点があります。
・保存期間が長くなる
食品添加物の中には、食品の酸化や腐敗を防ぐ効果を持つものもあります。保存料、酸化防止剤、防カビ剤が代表的な例です。
こうした添加物を用いることで、食品の保存期間を長くすることができます。廃棄ロスの削減や新鮮さをキープできるなど、生産者・消費者ともに多くのメリットを感じられます。
・食中毒を防止できる
食中毒の防止は、食品添加物の最大のメリットと言えます。
日本の気候は温暖多湿なため、昔から食中毒や食品の腐敗が発生しやすい環境にあります。1955年頃には、国内の食中毒による死亡者は年間数百人にも及びました。しかし、保存料や殺菌料、日持ち向上剤、酸化防止剤などの食品添加物が普及して以降、食中毒による死者数は著しく減少しました。厚生労働省の調査結果によると、2022年度の食中毒による死者数は年間5人にまで減ったとされています。
冷蔵庫の普及や食品加工技術の進歩も理由の1つではありますが、添加物の普及により食中毒の危険性が大きく軽減されたことは間違いありません。
・品質と価格が安定する
食品添加物を使用すれば、品質と価格を安定させることが可能です。
原材料の品質にばらつきがあったとしても、調味料や着色料、香料などを使用すれば、ある程度の香りや色味を補うことができます。例えば、毎日飲んでいる野菜ジュースの色や香りがいつもと違うと、不安な気持ちになりますよね。しかしながら、野菜ジュースの原料である野菜や果物は、品種や収穫時期、気候の変化や産地によって色、味、香りが変化します。こうした差異を小さく補正できるところが、食品添加物の力です。
価格についても、食品添加物を使えばコストを削減できます。食品の保存期間が長くなれば、余分な輸送コストが減り、安定した価格で供給できるようになります。添加物自体にかかる費用も、天然由来のものではなく、化学合成したものを用いればより安価になります。
・見た目が良くなる
食品の色や見た目は、食欲や満足度をアップさせるために欠かせない要素です。
無添加の食品は変色しやすく、見た目を維持することが難しい特徴があります。そのため、時には着色料を使って新鮮な見た目を維持、あるいは演出することがあります。
着色料は、鮮魚介類、食肉、野菜類などの生鮮食品への使用は禁止されていますが、これらを加工したものには広く使われています。日本国内では古くより紅花(ベニバナ)やクチナシ、ヨモギなどの天然由来の着色料が親しまれています。
・必要な栄養を強化できる
ビタミン・ミネラル・アミノ酸などの栄養強化剤を用いれば、現代人の不足しがちな栄養素を補うことができます。
ここではカルシウムを例にお話しします。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」によると、成人1日あたりのカルシウムの推奨摂取量は660mg~738mg程度とされています。一方で、2007年に発表された「日本人の食品添加物の一日摂取量調査研究」によると、生鮮食品から摂取できるカルシウムは1日あたり250mgという結果が出ています。また、加工食品から摂取されたカルシウムは約370mg、加工食品の原材料に含まれるカルシウムは約240mgでした。つまり、栄養強化剤は130mg使われていると推定されます。
これらを踏まえると、現代の日本人は1日のカルシウム摂取量の約21%を栄養強化剤から摂取していることになります。いまや人々にとって、食品添加物は欠かせない存在だといえるでしょう。
また使用目的として、加工食品などの製造過程で、失われた栄養素を補うために添加物が使われることもあります。しかし、元々含まれるはずの栄養素を補う目的で添加物を用いる場合は、ラベルなどでの表示義務はありません。消費者目線ではなかなか気づきにくいですが、私たちはこうして知らず知らずのうちに添加物のメリットを享受しているのです。
デメリット
食品添加物にはメリットだけでなく、注意しなければならない点もあります。ここでは、食品添加物の4つのデメリットをご紹介します。
・安全性が十分に検証されていない可能性がある
日本の食品添加物は、原則として厚生労働省が安全性を認めたもののみ、使用が許されています。添加物の発がん性・毒性については、ラットによる動物実験が行われており、法律上ではこの実験でラットに影響がない量の100分の1までを人間に使用して良いと定められています。
しかしながら、安全性の調査は添加物単体に対して行われており、複数の添加物を同時摂取したケースは十分に検証されていません。
また、安全基準は時代とともに移り変わります。2004年には再検証により「アカネ色素」という添加物から発がん性が発見され、既存添加物名簿から消除されたという事例もあります。
海外諸国では禁止されているにも関わらず、日本では使用が許可されている食品添加物も存在します。私たち消費者はこうした情報を加味した上で、日々の食事に添加物を取り入れるかどうかを選択する必要があります。
・1日の摂取量が決まっている
食品添加物には、食品安全委員会や国際機関による「一日摂取許容量(ADI)」が決められています。ADIとは毎日食べ続けても健康への悪影響がないとされる量のことです。
日本ではこのADIを元に、添加物ごとの使用基準が設定されています。
毎日同じ添加物を大量に食べ続けない限り、健康を害することはほぼないとされていますが、前述の通り添加物の複合摂取のリスクは検証不十分です。今後の研究に期待しつつ、一つの添加物はもちろんのこと、異なる添加物についても、同時に取りすぎないよう個々人で気を付けたいところです。
・糖分・脂質・塩分過多や味覚障害を引き起こす恐れがある
食品添加物は、香りや味にも大きな影響を与えるため、知らず知らずのうちに糖分や脂質、塩分を過剰に摂取してしまう場合があります。
たとえば果汁20%のジュース(清涼飲料水)は、果物が20%、残り80%が水や砂糖、添加物でできています。ここには、添加物の効果による爽やかな飲み口に惑わされて、自覚のないうちに大量の砂糖水を摂取する危険が潜んでいるのです。
糖分だけでなく、塩分や脂質も摂りすぎれば健康を害します。
この他に、亜鉛の吸収を妨げる添加物もあり、この場合は大量摂取による亜鉛不足や味覚障害を引き起こす恐れがあるので、注意が必要です。
また、添加物の味に舌が慣れすぎてしまうと、本来の素材の味だけでは物足りなく、美味しいと思えなくなっていきます。日本人全体がそのような感覚になってしまうことで、食文化の衰退にもつながることが危惧されます。
・アレルギー物質が入っている可能性がある
食材そのものにアレルギーがなくても、添加物にアレルギー品目由来のものが使われている場合があります。最近は卵や乳、果物や魚介類などの天然由来の添加物も多く、パッケージに「●●由来」と表示されていたりします。
こうした添加物を用いる場合には、ラベルや表記にアレルギー品目を記載する必要があります。赤い着色料の「カニ色素」、乳化剤の「カゼイン(乳由来)」、安定剤の「ペクチン(りんご・オレンジ由来)」などが代表的です。アレルギー持ちの人や、アレルギー持ちの家族がいる場合は、こうした表記をしっかり確認しましょう。
食べすぎると危険?注意が必要な食品添加物10選
厚生労働省が2000年に行った調査によると、日本人は1年で約4kgもの食品添加物を摂取しているそうです。最近では7.8kgまで増えたとも言われているため、今後もますます摂取量の増加が懸念されます。
添加物によっては、発がん性やその疑いがあるものも存在します。こうした添加物は少量であれば人体に影響はありませんが、知らない間に危険度の高いものを過剰摂取してしまう可能性もあるのです。
ここからは、そんなリスクを避けるために知っておくべき「食べすぎ注意」な10種類の食品添加物をご紹介します。
亜硝酸ナトリウム(発色剤)
亜硝酸ナトリウムは、主に食肉の色を鮮やかに保つために用いられる添加物です。ボツリヌス菌をはじめとした細菌の繁殖を抑え、腐敗を防止する働きがあります。主にハム・ソーセージなどの食肉製品や、いくら、すじこ、たらこなどの魚卵に使われています。
JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)による2回の評価では、亜硝酸ナトリウムは「ヒトへの摂取と発がんリスクに関連性があるという証拠はない」と結論づけられました。
しかし、その一方で亜硝酸ナトリウムは、別の物質と結びつくと健康リスクが高まると言われています。
例えば、肉や魚などのタンパク質を食べると体の中で生成される物質「アミン」もその1つです。アミンと亜硝酸ナトリウムが結びつくことで、発がん性物質の「ニトロソアミン」に変化する可能性があります。
また、亜硝酸ナトリウムは、血中のヘモグロビンと結合すると「メトヘモグロビン」を形成します。メトヘモグロビンも少量であれば問題ありませんが、血中の量に応じて呼吸困難、頻脈、チアノーゼ等の症状を引き起こすことがあります。特に生後3カ月以下の乳児や高齢者は、少量でも影響を受けやすいため注意が必要です。
アスパルテーム(合成甘味料)
アスパルテームは、低カロリーでありながら砂糖の約 200 倍甘いとされる合成甘味料です。主に飲料、菓子、チューインガム、ヨーグルトなどに使用されています。
JECFAや食品科学委員会(SCF)は、アスパルテームの一日摂取許容量(ADI)を「40mg/kg体重/日」と定めています。2013年12月には、欧州食品安全機関(EFSA)がアスパルテームの再評価を行っており、上記のADIを変更する必要はないと結論づけました。
一方、2006年にイタリアの「セサーレ・マルトーニ ガン研究所」にて行われた実験証明では、8週齢のラット(1グループ100~150匹)にアスパルテームを死ぬまで投与し続けたところ、悪性の腫瘍やリンパ腫、白血病の増加が見られたとされています。
さらに2022年にフランス国立保健医学研究所(INSERM)から発表された研究結果によると、人工甘味料の摂取量が多い人は人工甘味料を摂取していない人と比べて、がんと診断されるリスクが13%高いことが示されました。特に乳がんのリスクが高く、アスパルテームの摂取量が多い人で22%上昇したというデータも出ています。
アセスルファムK(合成甘味料)
アセスルファムKは、アスパルテームと同様、砂糖の200倍の甘みを持つ合成甘味料です。他の合成甘味料と併用されることも多く、アスパルテームを同量添加すると甘味度が40%増すと言われています。
2020年に開催された「日本小腸学会学術集会」の発表によると、アセスルファムKを長期投与したマウスの小腸を調べたところ、腸内細菌のバランスが崩れ、悪玉菌の増加が認められたそうです。
また、2021年のニュージーランドの研究機関からの発表によると、妊娠中の雌のマウスにアセスルファムKを含んだ餌を与えたところ、糖尿病予備軍の症状が引き起こされたといいます。他にもラットの子孫の発情期周期が不規則になったり、脂肪細胞の平均サイズが増加したりなどが、結果に現れました。
赤色3号、赤色102号、黄色5号、青色1号、青色2号(合成着色料)
19世紀中頃に開発されたのが、合成着色料であるタール色素です。タール色素は発色がよく、色が抜けにくく、それでいて安価であるというメリットの多さから、1964年には日本でも24種類が使用を許可されていました。
しかしその後、タール色素には発がん性などの毒性が指摘され、アメリカを始めとした世界各国で使用が制限されることとなりました。現在では11種類のみが許可されるに至っています。
以前までは、コールタール(石炭や木材などを煮詰めて得られる、黒いドロドロとした液体)から化学合成されたものが使われていましたが、現在では石油製品を原材料にして製造されています。
タール色素には、赤、黄、青などさまざまな色がありますが、特にメジャーなものを解説していきます。
・赤色3号、赤色102号
赤色の着色料の代表として挙げられるのが、赤色3号や赤色102号です。
赤色3号は、ピンクに近い紅色で着色できる合成着色料です。日本では紅白かまぼこ、漬物、菓子類などに使用されています。EFSA(欧州食品安全機関)の調査によると、この色素によるヒトへの急性毒性は認められていませんが、動物実験において甲状腺腫瘍などの症状が認められたことから、ドイツやアメリカでは規制されています。
赤色102号は主に漬物や菓子、ソーセージなどに使用される着色料です。動物実験の結果では、遺伝を含む発がん性は認められなかったものの、児童の多動性(ADHD)の増加や肝機能低下、赤血球の減少がみられたとされています。
・黄色5号
黄色や橙色への着色に使われる黄色5号は、ほぼすべての国で使用されている着色料です。菓子や清涼飲料に使われることが多く、他の着色料と混ぜて用いられることもあります。
黄色5号は国際がん研究機関(IARC)では発がん性が認められていませんが、2007年の英国食品基準庁(FSA)は10歳未満の児童への多動性(ADHD)との関係性が疑われると結論づけました。ただし、4mg/kgを超えるような大量摂取をしない限り人体への影響はないとされたことから、欧州では「子供の行動や注意に悪影響を及ぼすかもしれない」という注意書きを入れた上での使用・販売が許可されています。
・青色1号、青色2号
青色1号および2号は、共に青色に染色するために用いられる着色料です。
青色1号は主に清涼飲料水やお菓子、ハワイアンブルーのかき氷シロップ、氷菓子などに使われています。鮮やかなブルーに染色できる特性を持ち、水やアルコールに溶けやすいのが特徴です。青色1号を用いた動物実験では、注射による摂取で発がん性が確認されました。しかし、ヒトが経口摂取した場合は安全であるとされ、世界各国で使用されています。一方で、ドイツなどの一部ヨーロッパ諸国では使用が禁止され、代替品が用いられています。
青色2号は、青色1号に比べると青紫色をした着色料です。日本では和菓子や氷菓子、清涼飲料水などに使われています。青色1号と同様、動物実験では皮下注射で発がん性との関連が疑われていますが、ヒトへの影響はないとされ、使用が認められています。ただし日本国内では、魚肉や食肉の漬物、昆布類、スポンジケーキなど、制限が設けられた食品への使用は禁止されています。
安息香酸ナトリウム
安息香酸ナトリウムは、食品の腐敗を防ぎ、カビや細菌の繁殖を抑える保存料として用いられる添加物です。日本では主に栄養ドリンクや清涼飲料に使われています。
安息香酸ナトリウムを2%および5%含んだエサをラットに与えて4週間飼育した実験では、5%群のラットはすべて死亡しました。しかし、これまで紹介した添加物と同じく、大量に摂取しなければ問題ありません。
安息香酸ナトリウムにおける最も大きな問題は、ビタミンCなどの酸と一緒に摂取すると発生する「ベンゼン」という発がん性物質です。
2006年3月、FSA(英国食品基準庁)は英国内で発売されていた飲料150検体について、ベンゼン含有量の調査を行いました。その結果、4製品でWHOの基準値以上のベンゼンが含まれていたため、回収要請が出されました。
こうした結果を受けて日本でも同様の調査を行ったところ、1銘柄から日本の水道水の基準値およびWHOの基準値以上のベンゼンが検出されたため、自主回収となりました。
ベンゼンは熱、紫外線、金属イオンなど一定の条件下でしか発生しないとされていますが、リスク回避のためにもあらかじめ原料や添加物の内容を確認しておくと安心です。
ソルビン酸カリウム(合成保存料)
ソルビン酸カリウムは、細菌やカビの発生を抑え、腐敗を防止する役割があります。
コンビニやスーパーで売られている弁当類や、かまぼこ、ちくわ、はんぺんなどの練り物、ハム、ソーセージなどの加工食品、ワインやチーズなど、幅広い食品に用いられています。また、歯磨き粉やシャンプーなどの日用品にも含まれます。
ソルビン酸カリウムは、経口摂取後に腸でほとんど吸収された後、体内に分配されて、二酸化炭素や尿として排出されます。そのため、体内に成分が残ることはほとんどありません。
しかし一方で、ソルビン酸カリウムを摂取した結果、腸内の善玉菌が死滅し減少したという論文もあります。さらに、一定の環境下でソルビン酸と亜硝酸ナトリウムなどが反応し、生成された物質には遺伝毒性などがあるというデータも出ています。
ソルビン酸カリウムは、身近な食品、日用品に多く含まれているので、気づかぬ間に摂取しすぎないよう気を付けたいですね。
OPP、TBZ(防カビ剤)
OPP(オルトフェニルフェノール)やTBZ(チアベンダゾール)は、柑橘系のフルーツによく使われる防カビ剤です。オレンジなどを生産するアメリカでは、収穫後に散布される農薬(いわゆるポストハーベスト農薬)として使用されています。
日本ではポストハーベスト農薬は禁止されていますが、アメリカ政府からの要請を受け、1977年にはOPP、翌1978年にはTBZが食品添加物として認可されました。1969年時点ではOPPの農薬使用は禁止されていたことを考えると、異例の対応スピードだと言えます。
しかしながら、安全性には疑問が残ります。東京都立衛生研究所が行った動物実験では、妊娠中のラットにTBZを与えたところ、子どもの手足の奇形などの症状が認められました。また、OPPを含んだエサを与えたラットの83%が膀胱がんに、OPP-Naを含んだエサでは95%が膀胱がんや肝臓がんを発症したという実験結果もあります。
OPPやTBZは柑橘類の表皮に散布されますが、少量は果肉にも残ります。そのため、皮を剥いたとしても完全に取り除くことはできません。
こうした防カビ剤は、アルコール(エタノール)を含ませたキッチンペーパーなどでよくふき取ることで、大部分が除去できます。また、国産のものを選んで買うのも良いでしょう。
臭素酸カリウム(パン生地改良剤)
臭素酸カリウムは主に小麦パンに使われる添加物です。小麦のタンパク質に反応し、膨らみ方や食感を向上させる働きがあります。
臭素酸カリウムは、基本的には焼成時に消失する物質です。日本ではパンに限定した使用と、小麦粉1kgあたり0.03g以下までの使用制限、そして完成時には分解され、製品中には残存しないという条件のもとで許可されています。
そんな中、1980年代には発がん性が指摘され、日本国内の研究でも発がんのイニシエーター(DNA損傷作用)、プロモーター(発がんの促進作用)の両方の作用があると示されました。
国際がん研究機関(IARC)の評価では、「グループ2B(ヒトに対して発がん性があるかもしれない)」という分類付けがされており、EUなどでは使用が禁止されています。
メーカーによっては使用・不使用をHPなどで公表しているため、気になる方はあらかじめ調べた上で選ぶと安心でしょう。
カラギーナン(ゲル化剤など)
「カラギーナン」はゲル化剤として使用され、海藻の一種である「紅藻類」から抽出される添加物です。主にアイスクリームやゼリーなどに使われ、安定剤だけでなく、ゼラチンに代わる原料としても期待されています。
世界保健機関(WHO)は2001年にカラギーナンの評価について「安全である」と結論づけていました。しかし、その後の動物実験の結果から炎症性大腸炎や結腸がんを発症する可能性が指摘され、EUでは幼児用粉ミルクへの使用を禁止しました。2016年にはアメリカで、有機食品へのカラギーナンの使用禁止の議案が可決されています。
日本では現状、カラギーナンに関して特別な使用基準を設けていません。天然由来の成分として日本でも頻繁に用いられる食品添加物ですが、兵庫県尼崎市の学校給食ではカラギーナン入りのゼリーは採用しないなど、自主規制の動きも広まっています。
BHT、BHA(酸化防止剤)
BHAは「ブチルヒドロキシアニソール」、BHTは「ジブチルヒドロキシトルエン」と呼ばれる酸化防止剤です。どちらも油脂に溶けやすい性質を持ちます。
食品であればバターやマーガリン、魚介類の加工品などに用いられます。海外では米国、カナダ、EUなどで飼料・食品添加物として広く使われています。
日本では1954年にBHAが、1956年にBHTが食品添加物に定められました。BHTはBHAと化学構造が似ているため、代替品としての使用や、2つを混合して使用することもあります。
日本では1980年代、BHAの発がん性についての実験により「BHAは弱いながらラットに対して発がん性が認められる」という結論を出しました。しかし、これは正確には「ラットの“前胃”に発がん性が認められた」という結果ですので、前胃を持たないヒト、犬、猫などには影響がないとされています。
一方、1995年に英国のジョブリングらが化学物質の環境ホルモン作用を検討したところ、BHAには弱いながら女性ホルモン作用があることが分かりました。女性ホルモンは胎児に作用すると奇形・障害の可能性があるため、安全性には問題があるといえます。
日本でBHAやBHTは、医薬品添加剤として総合ビタミン剤などにも用いられてきました。現在BHAには「0.5 mg/kg 体重/日」、BHTには「0.25 mg/kg 体重/日」という厳しい基準が定められていますが、食品・薬品ともに原材料をチェックし、極力摂取量を減らすと良いでしょう。
さらに詳しい添加物の分類については、「食品の裏側―みんな大好きな食品添加物」の著者、安部 司氏が本の中で作成した以下の添加物分類表を参照してください。
食品添加物の複合摂取の危険とは
日本で使用される各添加物は、即時の毒性や蓄積性など、多方面から安全性を確認したものです。しかし前述の通り、複数の添加物を同時に摂取すること(複合摂取)については、実験そのものが成されていません。
食品安全委員会は2006年に、「食品添加物の複合影響に関する情報収集調査」を行いましたが、添加物の複合摂取で影響が出ている事例は認められなかったため、仮想的な問題にとどまるとしています。
とはいえ、添加物を複数含む食品を口にすることは、発がん性などの直接的な健康被害だけでなく、塩分・糖分過多や味覚にも影響します。コンビニ弁当やファストフード、カップラーメンなどのインスタント食品ばかり食べると、素材や天然の出汁の旨味が感じられなくなる可能性もあります。添加物の多い食事の危険性も加味しておきましょう。
食品添加物のメリットや危険性などの正しい知識を身につけよう!
食品添加物は、いまや私たちの食生活には欠かせない存在です。その反面、過剰に摂取すると健康や味覚に影響しかねません。
なるべく無添加の食品を選ぶことは、自らの健康を守るだけでなく、身近な人の味覚、ひいては日本の食文化を守ることにも繋がります。
普段スーパーで手に取る商品にも、食品添加物が表記されています。この記事をきっかけに、正しい知識を身につけた上で、自分の体に取り入れるものを選択していただけると幸いです。
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