
水は採取した場所や加工の仕方によって、いくつかの種類に分かれます。その中でも、特に「きれいで安全」と注目されているのが精製水です。
不純物やミネラルをほぼ取り除いた精製水は、美容や家事、精密機器のメンテナンスまで幅広い場面で活躍します。
この記事では、精製水の特徴や種類、暮らしでの使い方、より安全に使うためのポイントを紹介します。
精製水とは?

精製水とは、水の中に含まれている不純物を蒸留やろ過といった工程で徹底的に取り除いた、非常に純度の高い水のことです。
私たちが普段使っている水道水やミネラルウォーターと違い、精製水はほぼ「水そのもの」に近い状態まできれいにされた水です。
その高い純度と安全性から、医療の現場や化粧品づくり、精密な機械の洗浄など幅広い分野で活用されています。近年では、スキンケアや加湿器用など、私たちの暮らしの中でも役立つ存在として注目されています。
精製水は飲める?

精製水は「不純物が入っていないなら飲めそう」と思う人もいるかもしれませんが、基本的に飲用には適していません。精製水は不純物だけでなくミネラル成分も取り除かれています。そのため、体に必要なミネラルがほぼ含まれておらず、水道水やミネラルウォーターと同じ感覚で飲み続けると体内のミネラルバランスが崩れやすくなります。ミネラルバランスが崩れると、電解質異常や筋肉のけいれん、骨の弱化といった健康リスクにつながる可能性があるのです。
ただし、例外として「ベビー用」として販売されている精製水の一種、RO水(ピュアウォーター)は、加熱殺菌されていて安全性が高く、赤ちゃんのミルク作りに使うことができます。
精製水の種類

精製水にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる特性と用途を持っています。それでは、精製水の代表的な種類を見ていきましょう。
蒸留水
精製水の中でも特に代表的なものが「蒸留水」です。蒸留水は、水道水や井戸水などを一度蒸発させ、再び液体にして凝縮させる「蒸留」という工程を経て作られます。蒸留する過程で水の中に含まれていた不純物や溶け込んだ物質がほぼ取り除かれるため、非常に高い純度を持つ水になります。
こうして作られた蒸留水はとても清潔で、化学実験での試薬の調製や、研究・分析など精度が求められる場面でよく使われています。
ただし、蒸留水は製造工程が蒸留に限定されているため、工程中にごくわずかな不純物が混ざる可能性もあります。また、「蒸留水」として販売されている商品は第3類医薬品には分類されず、医療用途向けの精製水とは異なる点にも注意が必要です。日常生活の中では、加湿器やアイロン用の水など、純度の高い水が求められるシーンで役立ちます。
イオン交換水
イオン交換水は、イオン交換樹脂を使って水中のイオンを取り除くことで作られる精製水です。
イオン交換樹脂には、水道水に含まれるナトリウムやマグネシウムなどの陽イオンや、塩素や炭酸などの陰イオンを吸着する性質があり、特に硬度成分や重金属イオンを効果的に減らすことができます。そのため、工業や製薬分野など、精密で高品質な水が求められる場面で活躍しています。
純水・超純水
純水は水道水などに含まれるミネラルやイオン、有機物などをほとんど除去した水です。電子機器の製造や医療機関での使用、化学実験などの幅広い分野で使われますが、不純物はわずかに残っています。超純水はさらにそこから可能な限り不純物を取り除いた精度の高い水です。
超純水は半導体の製造などに使用されます。これらの分野では、わずかな不純物でも製品の品質や実験の結果に大きく影響するため、超純水のように極めて高い純度の水が用いられます。また、医療や研究開発の現場でも、正確な実験結果や安全性を確保するために利用されています。
日常生活で直接使う機会はほとんどありませんが、私たちの身の回りの電子機器や医薬品の安全性・品質を支える水として、重要な役割を果たしているのが超純水です。
RO水(ピュアウォーター)
RO水は、逆浸透(Reverse Osmosis)と呼ばれるろ過技術を使って浄化された水です。RO水は、通常飲用には向かない海水や汚染水も、飲用できる淡水に変えられるほどのろ過能力を誇ります。
ちなみに、RO水は、ピュアウォーターと呼ばれることもあります。
RO水はその高い浄化能力から、飲料水としても使われ、家庭用浄水器やボトル入りウォーターサーバーとして提供されることもあります。蒸留水やイオン交換水と比べると、家庭でもよく使われている点が特徴です。日常的に安心して飲める水を求める人や、赤ちゃん用のミルク作りに使う家庭でも重宝されています。
生活の中での精製水の使い道

精製水はその純度の高さから、美容や家庭生活、そして車のメンテナンスまで、さまざまな用途に利用されています。ここからは、精製水が生活のどのような場面で役立つのかを詳しく解説します。
美容
精製水は、美容ケアでも幅広く使われています。不純物をほとんど含まないため、肌への刺激が少なく、敏感肌やアレルギー体質の方でも比較的安心して使えるからです。たとえば、精製水を化粧水やスプレーとして用いると、肌を清潔に保つサポートとして活用できます。
また、精製水はエステやサロンの施術でも利用されることがあります。純度の高い水を用いることで、肌への負担を抑えられ、刺激に敏感な人にとって扱いやすい選択肢となります。精製水自体には美容成分は含まれませんが、肌を守る補助として安全に活用できる点がメリットです。
掃除などの家事
精製水は、日常の家事でも便利に使えるアイテムです。ミネラルや不純物を含まないため、水拭き後に水滴の跡が残りにくく、きれいな仕上がりが期待できます。水道水を使うと蒸発後にミネラルが残ってしまい、拭き跡や白い筋ができやすいですが、精製水ならその心配がほとんどありません。
具体的には、窓ガラスや鏡の掃除に使うと、拭き跡のないクリアな仕上がりになります。また、アイロンのスチーム用水として使えば、カルキの詰まりを防ぎ、長く性能を維持できます。さらに、精製水は不純物を含まないため物質を溶かし込む力が高く、服のシミ抜きの際にも力を発揮します。衣服に付いた汚れを、精製水が溶かして洗い流してくれます。
車のバッテリー液
車のバッテリー液が減ってきたときは、精製水を補充することで対応できます。ただし、補充はあくまで液面が減った部分だけに行うのが基本です。精製水を入れすぎると、バッテリー液の主成分である硫酸が薄まり、液の質が変わってしまうため注意が必要です。
バッテリー液の補充に使う水としては、水道水や普通のミネラルウォーターではなく、市販の高純度精製水を必ず使用しましょう。精製水であればミネラルや不純物がほぼ含まれていないため、バッテリー内の化学反応を妨げず、極板の劣化も防いでくれます。逆に不純物を含む水を使うと、化学反応が阻害され、バッテリーの寿命が短くなる可能性があるのです。
精製水を使用する際の注意点

ここからは、精製水を安全に使用するための重要な注意点について詳しく解説します。
使用期限を守る
精製水を使うときは、必ず使用期限を守りましょう。精製水は加工の過程で水中の不純物や塩素が取り除かれており、開封後は水道水のような塩素による殺菌効果がありません。そのため、細菌や微生物が繁殖しやすくなります。使用期限を過ぎた精製水は品質が低下し、衛生面でのリスクも高まるため、使用は避けましょう。
商品には使用期限が表示されており、未開封なら2〜3年持つものもあります。ただし、一度開封したらできるだけ早めに使い切るのが理想です。目安としては、開封後1週間以内に使い切ることをおすすめします。
保管方法に気を付ける
精製水の保管方法には注意が必要です。精製水には水道水のような塩素が含まれていないため、雑菌が混入しやすく、保存環境によって品質が低下する可能性があります。家庭で使用する場合は、冷暗所や冷蔵庫での保管が推奨されます。直射日光や高温多湿を避けることで、精製水の安全性を長く保てるでしょう。
また、ボトルの口を清潔に保つことも大切です。口が汚れていると雑菌が入り、水全体の品質に影響する場合があります。衛生面が気になる場合は、コック付きの精製水容器を選ぶと安心です。コックを使うことで手や他のものが水に触れるのを防げるため、清潔に保ちやすくなります。正しい保管と取り扱いで、精製水の効果を安心して活用しましょう。
自作代用品はなるべく使用しない
家庭で市販の精製水と同じ純度を再現するのは非常に難しく、知らないうちに不純物や雑菌が混入してしまう可能性が高いです。
市販の精製水は、高度な技術と管理された設備で製造されており、安全性と純度がしっかり保証されています。これに対し、煮沸や家庭用フィルターで作る場合、水道水やフィルターの状態によって品質が左右され、雑菌や微粒子が入りやすくなります。また、衛生的に管理する手間もかかります。
そのため、精製水が必要な場合は、品質が保証された市販の商品を使うのが安心でしょう。なお、日常的な拭き掃除など、水に高い純度が求められない用途では、殺菌された清潔な水道水で十分です。目的に合わせて上手に使い分けましょう。
精製水を使うときは注意点を押さえて、安全に活用しよう

精製水は、不純物やミネラルを徹底的に取り除いた、非常に純度の高い水です。医療や工業分野など専門的な場面で使われることが多いですが、実は私たちの身近な暮らしの中でもさまざまな活用法があることを紹介しました。
ただし、精製水は飲用には適しておらず、開封後は雑菌が繁殖しやすいため、正しい保管方法や使用期限を守ることが大切です。精製水を活用する際は、この記事で紹介した内容を参考にしてみてください。





