お花見で賑わう春はお茶の季節でもあります。 歳時記では、「茶摘み」は「八十八夜」とともに春の季語とされており、 八十八夜(今年は5月1日)の頃に摘まれたお茶は新茶と呼ばれ、飲めば一年間無病息災で過ごせると、昔から珍重されています。お茶に関わる光景も、日本人に欠かせぬ風物詩として、俳句でも様々に詠まれています。そこで今回は創業1751年の江戸時代から続く宇治茶製造卸問屋で、長年オーガニックのお茶を販売されている、株式会社カネ七畠山製茶の畠山社長にお茶に関するお話をお伺いしました。春の日に、美味しいお茶と一緒にほっこりしながらお読みいただけると嬉しいです。
———まず、お茶にはどんな種類があるのでしょうか
畠山さん:お茶には、不発酵茶の緑茶 、半発酵茶の烏龍茶 、発酵茶の紅茶がありますが、私たちが栽培している宇治茶は、不発酵茶の緑茶が中心です。茶葉を育てる茶園には覆いをかぶせた覆下(おおいした)園と、茶園に覆いをしない露天園があります。よしずや寒冷紗※(かんれいしゃ)などで茶園を覆った覆下園で育った茶葉は、渋みが少なく旨味が多くなり、抹茶や玉露の原料となります。そして日光を燦々と浴びて育った露天園のお茶が煎茶で、それを焙煎するとほうじ茶、玄米と混ぜると玄米茶となります。お茶の種類は、茶葉が育った環境(覆下園か露天園)のほか、摘む季節、部位、製法によって異なってきます。 日光をいっぱい浴びた露天園のお茶はキリッとした、エッジの効いた渋みがあるので常用の飲み物として楽しまれています。そして直射日光を避けた覆下園で育てた抹茶、玉露を私は“美緑”と名付けていますが、渋みを抑えた、まろやかで奥深い旨味のためお菓子と一緒にリラックス時に飲むお茶だと考えています。
※植物をおおって保護する「被覆資材」のひとつで、夏の高温や強い日差しを防ぐ役割のほか、防寒や防風、防虫の目的で使われます。材料は、ポリエチレンなどの化学繊維や、綿、麻などが使われ、網目状に荒く織り込まれています。ガーゼを固くしたような質感で、黒や白、銀、透明色があり、用途に応じて使い分けます。
———なるほど、お茶だから美白ならぬ美緑なのですね。次はお茶が身体や美容にいいとよく言われているのはどうしてでしょうか
畠山さん:お茶には美肌効果や抗酸化作用、動脈硬化の予防、ストレス解消に良いと言われているビタミンA、ビタミンC、ビタミンEなどが含まれています。また、渋味成分であるカテキンという成分も含まれており、こちらは殺菌効果があると言われています。よくお茶でうがいをするといいとか、お医者様が診察の合間にお茶を飲んでいるのはこの殺菌効果が実証されているからなんです。 お茶は今から約800年前に中国から伝来したのですが、日本人にとって今や必要不可欠なお茶も、当時は薬として飲まれており、身分の高い人しか飲むことができなかったと言われています。 そして、茶葉自体が身体に良いため、本当はお湯に煎じて飲むより丸ごと食べた方がカテキン摂取量が増えるため健康に良いとされています。最近では抹茶が海外でも人気ですが、茶葉を粉末にしているのでお茶の成分を丸ごと取り入れられる健康食品として注目されている面もあると考えています。
———風邪予防にお茶がいいと言われているのはそんな理由からだったのですね。ところで畠山さんは早くからオーガニック茶の取り扱いを始められていますが、オーガニック茶栽培へのこだわりを教えてください。
畠山さん:私どもは常に安心・安全なものをお客様に提供することを意識しており、契約茶園さんと農薬、化学肥料を使わない茶葉を自然栽培にて、丹精こめて作りあげています。『良薬口に苦し』という諺の通り、以前はオーガニック茶は苦いというイメージを持たれるお客様が多かったのですが、ここ最近の地球環境問題への人々の意識の高まりから自然の大地の恵みを使った素材本来の味、身体に良いものは苦いという本来の味わいへの理解が広がってきているなと感じています。そのような中でも私たちは有機栽培でおいしくするためのチャレンジをこれからも続けていきたいと思っています。
———コロナ禍を通じて、私たち自身も今まで以上に安心・安全なものへの関心が高まっていると感じています。そこでお茶といえば水も大切な要素ですが、お茶をより美味しく飲むために適したお水とはどんなものでしょうか。
畠山さん:日本は水道水をそのまま飲める数少ない国ですが、日本の水は主に軟水と言われるもので、日本茶の旨味、渋み、苦味を引き立たせる軟水が適しています。海外では紅茶やウーロン茶のようにお茶の香りを楽しむ文化がありますが、日本は出汁文化ということもあり、味わいを楽しむ傾向が強いと考えています。水道水からお茶を入れる場合は沸騰させてカルキ等を抜くことも大切ですが、浄水器やミネラルウォーターでお茶を淹れるとより美味しいお茶を楽しんでいただけるので特におすすめです。
———美味しいお茶を飲むには美味しいお水が必要ということですね。それでは最後に今回キャンペーンで使用させていただきましたオーガニック宇治茶ハーブティーを作られたきっかけを教えてください。
畠山さん: 以前から日本茶というとちょっと敷居が高いというイメージを持たれている方が多いなと思っていて、私たちがこだわったオーガニック煎茶をもっとたくさんの人に楽しんでいただくにはどうすれば良いかを日々考えていました。とりわけ女性に気軽に飲んでもらえるお茶について色々リサーチをしていたところ、女性はフレーバー茶を好んで飲んでいるという情報を得ました。当初はお茶とのブレンドには躊躇いがあったのですが、少しでも煎茶を飲んでもらうきっかけになればいいなと考え、自分の中でオーガニックハーブとオーガニック宇治茶のブレンドティーを作り上げていくことにしました。そこで国産のオーガニックハーブを作られている農家さんを訪問してブレンドティーのお話をしたところ、快く供給を引き受けて下さったので、ハーブの良さと日本茶の香りを損なわないよう工夫を重ね、食事に合うもの、リラックスしたい時など様々なシチュエーションを想定してブレンドを行いました。これからも京都のお茶文化を発信するため、有機抹茶の魅力を伝える商品づくりと、お客様に飲んで美味しいと感じていただける、身体と心にいいお茶作りをしていきたいと思っています。
———お茶に関する楽しい、為になるお話を有難うございました。
株式会社カネ七畠山製茶
宝暦元年(1751年)創業。本物で高品質な有機抹茶・宇治茶の製造、販売に尽力。家庭で急須のない生活が当たり前となりつつある近代に、平安時代より続く日本のお茶文化、緑茶発祥の地、京都より急須でお茶を飲む文化が薄れない様、急須とお茶の普及活動を進める。人の心と生活に「ほっ」と「感動」をお届けする「TEAアーティスト」として今までにないお茶の世界を創造し日々発信を続けている。