「家族の健康のために身体によい食事をつくりたい」とは思うものの、「どんなことに気をつけて献立を考えればよいのかわからない」という方は少なくないでしょう。好きな物を好きなだけ食べていては栄養が偏ってしまったり、食べ過ぎて太りすぎてしまったり……。健康を保つ秘訣は、さまざまな種類の食べ物をバランスよく食べて栄養をとること。まずは身体に必要な栄養素や効果的な食事の仕方を知り、健康な身体づくりに役立ててみましょう。
私たちに必要な5大栄養素とは
私たちの身体に必要な栄養素は、「糖質」「脂質」「たんぱく質」「ビタミン」「ミネラル」の5つです。一部のビタミンを除いてこれらの栄養素を体内でつくり出すことはできないため、毎日の食事から摂取する必要があります。これら5つの栄養素は、それぞれ適切な量を摂取することが、バランスのよい食事につながります。まずはそれぞれの栄養素の特徴や働きについて知っておきましょう。
糖質
身体のエネルギーになる栄養素の中でもっとも重要なのが「糖質」です。糖質は米、小麦などの主食や、いも類、とうもろこし、果物や砂糖などから摂取しますが、日本人は摂取エネルギーの60%程度を糖質から得ていると言われています。また、糖質は脂質の代謝にも関与しています。エネルギーとして使われずに余った糖質は、グリコーゲンや中性脂肪に代わり体内に蓄えられているのです。
脂質
糖質と同様、身体のエネルギーとなる栄養素です。糖質1gあたりのエネルギーは4kcalに対して、脂質1 gのエネルギーは9 kcalと、少量でも高カロリーを得られる効率のよいエネルギー源です。また、エネルギーを蓄える働きや細胞膜をつくり出す働き、身体の機能や生理作用を一定に保つ働き、脂質に含まれる脂溶性ビタミンの供給源の働きなどもあり、体内で幅広く活用されています。
タンパク質
タンパク質は、筋肉や皮膚、毛髪、爪、臓器、神経など身体をつくるために非常に重要な栄養素です。酵素やホルモン、免疫物質、筋収縮や輸送に関与する物質などもタンパク質からつくられます。たんぱく質は多数のアミノ酸がつながったもので、身体を構成するタンパク質は約20種類のアミノ酸からできています。また、タンパク質は糖質の摂取量が足りないときに分解され、エネルギーとして消費することもあります。
ビタミン
糖質、脂質、たんぱく質の代謝を助け、生命維持のために必要な栄養素です。体温調節や体内で必要な物質の生成、神経の働きや代謝のサポートなど、身体の状態を一定に保つために重要な働きをしています。ビタミンには「脂溶性ビタミン」と「水溶性ビタミン」の2種類があり、脂溶性ビタミンは脂質と一緒に体内に蓄えられますが、水溶性ビタミンは体内に貯蔵できる日数が短いため、こまめに摂取するようにしましょう。
ミネラル
ビタミンと同様、糖質、脂質、たんぱく質の代謝を助ける、生命維持のために必要な栄養素です。人間の身体は約60種類の元素で構成されており、身体を構成する主要なミネラルには水素、炭素、窒素、酸素がありますが、これら以外の元素を総称して「ミネラル」と言います。ミネラルの中でも栄養素として不可欠な16種類は「必須ミネラル」と呼ばれ、骨や歯、筋肉や血液などをつくる働きがあるほか、さまざまな生理作用に関わっています。ミネラルは体内でつくれないため、食べ物からこまめに摂取しなければなりません。
私たちの身体に必要な「糖質」「脂質」「たんぱく質」「ビタミン」「ミネラル」の5つの栄養素。では、毎日の食事で何をどれぐらい食べたらバランスよく栄養素をとれるのでしょうか。その参考になるのが、農林水産省が提案する「食事バランスガイド」です。
1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかがわかる「食事バランスガイド」
上記のような、5つの階層に分かれたコマをイメージしたイラストを目にしたことはありませんか? このイラストは農林水産省が提案する「食事バランスガイド」と呼ばれるもので、1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかがわかりやすく示されています。
まずは「何を」食べたらいいのかチェック!
コマには5つの食べ物グループの階層があり、上から「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」となっています。上にある食べ物ほど、多くの量をしっかり食べる必要があります。
5つの食べ物グループをバランスよく食べるとともに、適度な運動(回転)をすることでコマは安定します。しかし、どれかが欠けていたり食事のバランスが悪かったりすると、コマは倒れてしまいます。なお、菓子や嗜好飲料はコマを回す「ひも」として表現されています。食事全体の量からバランスを考え、適度に摂取するようにしましょう。
「どのくらい」食べたらいいのか、食事量の目安をチェック!
「食事バランスガイド」では、コマに描かれている料理のイラストを目安に、料理を「1つ」「2つ」という単位で数えます。たとえば主食の基準となるごはんの「1つ」の目安は、コンビニエンスストアで販売されているおにぎり1個。パンは食パン1枚が「1つ」の目安。めん料理1人前は「2つ」に相当します。各階層の食べ物グループごとに1日に摂取する目安量は以下になります。
1日の目安量
主食(ごはん、パン、めん類) | 5~7つ |
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副菜(野菜、きのこ、いも、海藻類) | 5~6つ |
主葉(肉、魚、卵、大豆) | 3~5つ |
牛乳・乳製品 | 2つ |
果物 | 2つ |
バランスのよい食事を決まった時間に必要な量だけとることは、健康を維持するための基本です。「食事バランスガイド」のコマを回すことをイメージしながら、毎日の献立を考えてみるとよいでしょう。
食べ物だけでなく、たっぷりの水分補給も必要です
水分は私たちの身体にもっとも多く含まれる物質であり、成人の身体の55~60%を占めています。水分は酸素や栄養素の運搬、老廃物の排出、栄養素の吸収・代謝、体温の維持・調節など体内のさまざまな機能に関わっており、生命の維持には欠かせないものです。
生命活動維持に重要な水分の働き
- 酸素や栄養素、老廃物の運搬
- 血液に溶け込んでいる酸素や栄養素を全身に運搬し、各臓器や組織、細胞に届けます。また、不要な老廃物を尿として体外に排出する働きもあります。
- 栄養素の吸収・代謝
- 食べ物に含まれる栄養素を、体内に吸収しやすい状態にします。また、栄養素が水分に溶けた状態で代謝が行われます。
- 体温維持・調節
- 水には温まりにくく冷めにくい性質があります。水は温度が変化しにくい物質であるため、体温を一定に保ちやすくなります。
家族の健康づくりの基本は毎日の食事から!
健康な身体を維持するには、栄養バランスのとれた食事が重要です。農林水産省が提案する「食事バランスガイド」のコマのイラストを思い浮かべながら、1日に「何を」「どれだけ」食べたらいいのかを考えて献立を立ててみましょう。
そして、バランスのとれた食事とともに、安全でおいしい水をたっぷりとることも忘れずに。健康のためには残留塩素が含まれる水道水ではなく、浄化されたおいしく安全な水を飲む習慣をつけましょう。食事と水分摂取に気をつかって、健やかで生き生きとした日々を送ってくださいね。