私たちの身の回りには、塗料やプラスチック製品、薬品など、さまざまな化学物質から作られたものが溢れています。しかし、こうした製品の中には用量や使い方を誤ると、人体や生態系などに大きな影響を及ぼすものも存在しています。
そのため、あらゆる化学物質には法律や条例で使用が制限、または禁止されているのです。
近年注目を集めているのは、PFAS(ピーファス)という人工化学物質群で、中でも特にPFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)と呼ばれる有機フッ素化合物が問題になっています。
この記事では、「第二のダイオキシン問題」とも呼ばれるPFOS、PFOAをはじめとしたPFASの性質や人体への影響など、気になるポイントをご紹介していきます。
2022年 に3M社が発表「2025年末までにPFAS製造から完全撤退」
産業上、PFASを初めて使った3M社ですが、2022年12月20日の発表で、2025年末までにPFASの製造を終了し、販売しているすべての製品でPFASの使用中止に取り組むことを決定しました。
この決定は、環境中のPFASを減らすための各国の規制強化や、3M社のステークホルダー(企業活動の影響を受ける利害関係者全般)の期待の変化など、変化する外部環境を慎重に検討した結果とのことです。
2023年12月 PFOSとPFOAの発がん性評価結果をIARCが公表
2023年12月1日、国際がん研究機関(IARC)は、PFOSをグループ2B(発がん性の可能性あり)に、PFOAをグループ1(発がん性あり)に分類する評価結果を公表しました。
IARCはWHOの一機関で、発がん性を4段階に分類して評価します。この結果はPFAS規制や健康リスク対策の議論を加速させると期待されています。
2024年 米国コロラド州、PFASの規制に関する法律が成立 PFAS含有製品の販売を段階的に禁止に
米国コロラド州は、2024年から2028年にかけて、PFASを含む製品の販売を段階的に禁止する法律を制定しました。
規制対象は、アウトドア用品、日用品、医療器具、食品器具など、幅広い製品に及びます。
この規制は、PFASが環境や人体に与える悪影響を懸念したものです。
規制内容は以下のとおりです。
- 2025年1月1日:PFASを使用したアウトドアアパレル製品に表示義務。
- 2026年1月1日:PFASを使用したクリーニング製品、デンタルフロス、生理用品、スキーワックス、調理器具の流通・販売を禁止。州内の土地へのPFASを使用した人工芝の設置禁止。
- 2028年1月1日:PFASを使用した医療用床メンテナンス製品、繊維製品、透湿防水加工アウトドアアパレル製品、食品器具の販売禁止。
この規制は、米国におけるPFAS規制の動きを加速させ、今後、他の州でも同様の規制が導入されることが予想されます。
国内編:有機フッ素化合物-PFAS(ピーファス)-をめぐる動きを時系列で解説
2009年4月 国内で「水道水に係る要検討項目」にPFOS・PFOAが追加
2009年4月、「水道水に係る要検討項目」にPFOS、PFOA、および「N-ニトロソジメチルアミン(MDMA)」「過塩素酸」の4項目が追加されました。しかし、この時点では具体的な目標値の設定は見送られることとなりました。
PFOS、PFOAの長期毒性の疑いはあるものの、WHOでは明確な基準が提示されていないことを理由の一つとしています。
2010年 国内でPFOSの製造・使用・輸出入が原則禁止
その翌年、国内では「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」が改正され、「PFOS及びその塩」を含む12物質が第一種特定化学物質(原則として製造・輸入が禁止)に指定されました。
この12物質のうち「PFOS 及びその塩」を始めとした3物質が含まれる14製品は輸入を禁止されました。
2020年4月 厚生労働省がPFOS・PFOAを「水質管理目標設定項目」に
2020年4月、PFOS、PFOAは「要検討項目」から「水質管理目標設定項目」へと改定され、暫定目標値をPFOSとPFOAの合計で50ng/L(ng/Lは、水1リットルあたり10億分の1グラムの物質が溶解していることを表す)と設定されました。
また、2021年4月に、PFASのひとつであるPFHxSが「要検討項目」に位置づけられましたが、目標値は設定されませんでした。
この流れのきっかけとなったひとつが沖縄県からの要請です。
2016年1月、沖縄県の嘉手納飛行場周辺の河川や普天間飛行場周辺の湧水などから、高濃度のPFOSが検出されたことをきっかけに、水道水質基準値などの設定を強く求めていました。
水質管理目標設定項目とは…水道事業者等において、水質基準に係る検査に準じて体系的・組織的な監視によりその検出状況を把握し、水道水質管理上留意すべき項目
暫定目標値とは…ヒトが70年間毎日2L飲用しても問題ないとされる値
2021年4月 国内でPFOAが第一種特定化学物質に指定へ
2021年4月21日、化審法の改正が行われ、「PFOA又はその塩」が第一種特定化学物質に指定されました。
これにより、PFOSに続きPFOAも、物質の製造・使用・輸入が原則禁止となったのです。
「PFOA又はその塩」が含有される製品として、耐水性能や、耐油性能を与えるために処理した紙や生地、塗料や反射防止剤など、さまざまなものが輸入禁止になっています。
2021年4月 国内でPFHxSが「要検討項目」に
有機フッ素化合物「PFHxS」は、PFOS及びPFOAと同様の性質を持っています。そのため、PFOS、PFOAの規制後は、代替品として用いられてきました。
しかし2021年4月、PFHxSが「要検討項目」として位置づけられました。目標値は設定されていませんが、PFHxSに関しても定期的に検査を行い、各水道局などのホームページで検査結果が発表されることになっています。
2023年4月 “PFAS汚染”全国マップの公開
2023年4月、環境省が全国のPFAS汚染マップを公開。過去3年間の調査で、指針値を超える地点が明らかになりました。
2024年6月9日、最新データを基にマップが更新され、新たな汚染地域や改善状況が示されています。詳細はこちら(NHKニュース)をご覧ください。
2023年11月 PFHxSを第一種特定化学物質に指定する政令が閣議決定
2023年11月28日、日本政府はPFHxS(パーフルオロヘキサンスルホン酸)とその関連物質を第一種特定化学物質に指定する政令を閣議決定しました。
これにより、PFHxSの製造や輸入、使用が原則禁止となり、はつ水・はつ油性能を持つ衣類や床材、消火器、半導体材料などに対する輸入規制が導入されます。
また、一部の製品には国の技術基準に基づいた取り扱いが義務付けられます。
施行は2025年2月1日から段階的に行われる予定です。
2024年5月 全国初のPFAS徹底調査を開始
2024年5月29日、国土交通省と環境省が共同で「水道におけるPFOS及びPFOAに関する調査」の結果を公表しました。今回の調査により、全国規模での汚染実態把握が進み、さらなる規制や対策の議論が期待されています。
政府は水道事業者に対し、PFOSやPFOAなどの「永遠の化学物質」と呼ばれるPFASの検出データ提供を要請。調査結果は、水質基準や目標値の見直し議論の重要な資料として活用されます。
2024年6月 食品安全委員会がPFASの健康影響を初評価
2024年6月25日、内閣府の食品安全委員会が、有機フッ素化合物(PFAS)の食品における健康影響について初めて評価書を決定しました。この評価では、PFOSとPFOAの耐容一日摂取量(TDI)がそれぞれ 20 ng/kg体重/日 と設定されました。一方で、PFHxSについては十分なデータが不足しているため、現時点での指標値算出は困難とされました。
食品安全委員会は、今後の研究やデータの蓄積によって、今回のTDIの見直しが必要になる可能性も示唆しています。この評価は、食品中のPFASへの規制やリスク管理における重要な指針となります。
2024年7月 PFOA関連物質を第一種特定化学物質に指定
2024年7月5日、日本政府は「PFOAの分枝異性体およびその塩」「PFOA関連物質」を第一種特定化学物質に指定する政令を閣議決定しました。これにより、製造や輸入が原則禁止され、一部の製品には輸入規制や取扱基準が導入されます。
規制は2024年9月10日から段階的に開始され、2025年1月10日に完全施行予定です。
2024年12月 石破首相、PFAS検査義務化を発表
2024年12月3日、石破茂首相は参院本会議で、有機フッ素化合物(PFAS)について水道事業者への検査と結果の公表を義務付ける管理強化策を来春までに進める方針を表明しました。
PFOSやPFOAを対象とし、「飲み水を経由した健康リスクの低減が重要」と述べ、水道法に基づく管理強化策を検討する考えを示しました。
政府はこれにより、全国の水道水におけるPFASの実態を把握し、リスク管理を強化する方針です。
この取り組みは、国内で高まるPFAS汚染への懸念を背景に、より安全な水環境の確保を目指す重要な一歩となると期待されています。1
有機フッ素化合物-PFAS(ピーファス)-汚染問題に関する国内の事例
有機フッ素化合物-PFAS(ピーファス)-は、国内各地で汚染が確認されています。
広島県東広島市では水路から国の暫定目標値の80倍の濃度が検出され、愛知県犬山市の河川や大阪府の工場周辺の河川でも基準値を超える汚染が報告されています。
東京都多摩地区では地下水や住民の血液から高濃度のPFASが検出され、一橋大学では地下水利用が停止されました。
また、また、沖縄県宜野湾市の普天間飛行場や神奈川県相模原市東部の道保川でも汚染が確認されています。
これらの事例は、国内におけるPFAS汚染の深刻さを浮き彫りにしており、早急な対策が求められています。ここでは国内のPFAS(ピーファス)汚染問題の事例をいくつかご紹介します。
沖縄県普天間飛行場周辺区域
沖縄県普天間飛行場周辺では、2016年以降の調査で地下水や湧水から環境省の暫定目標値(50ng/L)を超えるPFASが検出されました。2020年4月の泡消火剤流出事故では、周辺河川で20,000ng/LのPFAS(6:2FTS)が確認され、下流の湧水でも濃度上昇が見られました。普天間飛行場において発生した泡消火剤流出事故による影響の可能性が示唆されています。2
その後、2023年には県内41市町村で土壌調査を実施し、すべての市町村でPFASが検出されました。特に久米島町ではPFOSが92ng/L、名護市ではPFOAが95ng/Lに達しました。
基地の有無を問わず高濃度が確認され、汚染原因の多様性が示唆されています。土壌汚染に関する国の基準がないことが課題とされています。3
6:2FTSとは…PFASの一種で、主に泡消火剤に使用される化学物質のこと。製造や使用が禁止されているPFOSの代わりとして利用されるようになったとされています。
岡山県吉備中央町
2023年10月、岡山県吉備中央町で水道水から国の暫定目標値の28倍にあたるPFAS(1400ng/L)が検出されました。2020年以降4年間続いた汚染は、水源切り替えにより現在は基準値以下に改善されていますが、住民からは健康への不安の声が上がっています。4
また、2023年11月には資材置き場から放置された使用済み活性炭が発見され、その周囲の土壌で62,000ng/LものPFASが検出されました。この廃棄物が近隣浄水場の汚染原因と推定されていますが、詳細な因果関係は未確認です。5
東京都小金井市 東京学芸大学
東京学芸大学では、2022年7月に構内の井戸の一つからPFOSとPFOAが国の暫定目標値50ng/Lを超えて検出されました。
当初、福祉保健局の「直ちに健康影響はない」との説明を受け利用を継続しましたが、2023年7月に方針を転換。
汚染が深刻な東井戸の使用を停止し、西井戸(14ng/L)のみの利用に切り替えました。これは福祉保健局からの取水停止要請による対応です。
東京都国立市 一橋大学
一橋大学(国立市)では、井戸水から高濃度のPFASが検出され、2019年には370ng/Lに達しました。これを受け、2020年4月から井戸水の利用を停止し、水道水に切り替えました。
一方、小平国際キャンパスでは井戸水の濃度が25ng/Lと暫定目標値以下のため、引き続き利用されています。大学は定期的な水質検査を行い、安全性を確認しています。6
東京都国立市 桐朋学園男子部(小中高)
桐朋学園男子部(小中高)は、2020年に地下水から562ng/LのPFASが検出され、地下水の利用を停止して水道水に切り替えました。
しかし、水道代は年間約600万円にのぼり、定期的な水質検査の高額な費用も課題となっています。
多摩地域の汚染源として、2012年に米軍横田基地で漏出した泡消火剤が指摘されていますが、日米地位協定により調査は進んでいません。7
熊本県益城町の東海大学
2024年8月、益城町の東海大学「阿蘇くまもと臨空キャンパス」の井戸水から82ng/LのPFASが確認され、県は飲用の自粛と周辺調査を開始しました。
同キャンパスでは食堂で水道水が使用されており、健康への影響は少ないとされています。8
熊本県南関町の産業廃棄物処分場を含む2施設
2024年11月には南関町の産業廃棄物処分場を含む2施設の井戸から指針値の約4倍のPFOSやPFOAが検出され、周辺500メートル以内の井戸で追加調査が進められています。
現時点では施設が汚染源とは特定されていませんが、県は住民に井戸水の飲用を控えるよう呼びかけています。
熊本県ではこれまでも熊本市の井戸水で基準値超過が確認されており、地下水を主な水源とする地域にとってPFAS汚染は深刻な課題となっています。9
有機フッ素化合物-PFAS(ピーファス)-に関するQ&A
WACOMSなら有機フッ素化合物(PFOS・PFOA)除去率98%
「WACOMS TRUST under」シリーズの横型および縦型浄水器は、有機フッ素化合物(PFAS)の一種であるPFOS・PFOAを98%以上除去する性能が確認されました。
この結果は、第三者機関によって実施された浄水器協会(JWPA)の定める規格基準(JWPAS B基準)に基づく試験によるものです。この試験では、水道水の「水質管理目標設定項目27項目」に含まれるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)及びPFOA(ペルフルオロオクタン酸)の濃度を98%以上除去できることが証明されました。
詳細については、以下のリンクをご覧ください。
https://wacoms.jp/news/collection/pfospfoa_evidence.pdf
■対象製品
「WACOMS TRUST under」(横型) WS300-U1
「WACOMS TRUST under」(縦型) WS300-U1T
※WEBサイト、カタログ、取扱説明書などの表記に関しましては、順次変更してまいります。
※製品仕様には変更ございません。従来品も同様の除去性能にてご使用いただけます。
- https://www.jiji.com/jc/article?k=2024120300525&g=pol ↩︎
- https://www.pref.okinawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/006/589/syoho57_p60.pdf
↩︎ - https://www.asahi.com/articles/ASS4K0GL7S4KTPOB005M.html ↩︎
- https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241201/k10014653471000.html ↩︎
- https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240606/k10014471451000.html
↩︎ - https://www.hit-u.ac.jp/guide/information/pfas_water.html ↩︎
- https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240606/k10014471451000.html ↩︎
- https://www.asahi.com/articles/ASS8R3VGZS8RTLVB00KM.html ↩︎
- https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20241127/5000023922.html ↩︎
- https://www.jspd.or.jp/recommendation/pdf/202303.pdf ↩︎
- https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acsestwater.4c00533 ↩︎