日本の水道水は、そのままでも飲めるほど世界的にも「きれいで安全」と言われています。しかし、水道水には残留塩素などの不純物が混ざっているのも事実。そういった不純物を取り除いてくれるのが、浄水器です。今日では一般家庭にも広く普及しているため、家電量販店などで目にしたことがある方も多いでしょう。今回は、そんな浄水器の基礎知識や必要性について解説します。
そもそも浄水器とは?
まずは、浄水器の基礎知識や混同されやすい「整水器」との違いについて押さえておきましょう。
浄水器とは?
浄水器の基本的な機能は、内部に設置された活性炭などのフィルターによって水道水に含まれる不純物を取り除くことです。現在は浄水器という名称でさまざまな水を処理する機器が販売されていますが、法律や家庭用品品質表示法などの規格基準によって定められています。浄水器は、「水道水の中に含まれる残留塩素やトリハロメタンなどの物質を除去または減少させる機器」を指しています。
浄水器が水をきれいにするメカニズム
浄水器は、「水道水をフィルターに通すことで不純物をろ過する」というのが基本的な仕組みになっています。どれだけの不純物を取り除けるかは、使用されている「ろ材」や出す水の勢いによって変わります。水の勢いについては「十分にろ過ができる適度な水の速さ(=ろ過流水)」が決まっているので、浄水器を選ぶ際はろ材やろ過流水速度もチェックしておくとよいでしょう。
浄水器の6つの形態と特徴
蛇口直結型
家庭でよく見かける、蛇口に直接取りつけるタイプの浄水器です。設置が簡単で手軽に使いやすく、比較的安価なものが多いのも特徴。ただしコンパクトな分、一度にろ過できる水量が限られることや、カートリッジの寿命が短い点が挙げられます。
据え置き型(シンクトップ)
据え置き型は浄水能力が高く、カートリッジが長持ちするのが大きな特徴です。ただし、やや価格が高額になる傾向があります。サイズは大型なものが多いため、設置スペースを広めに確保する必要があります。
アンダーシンク型(ビルトインタイプ)
アンダーシンク型は、流しの下に設置するタイプなのでキッチン周りを広く使うことができます。また浄水効果が高く、フィルターも比較的長持ちするのが嬉しいポイント。ただし、本体価格は比較的高めで、設置費用が別途必要になることもあります。
水栓一体型
水栓の中にカートリッジが組み込まれた水栓一体型は、見た目がスッキリしているので、外観にもこだわりたいという方におすすめです。ただし、カートリッジの寿命が短くこまめな交換が必要であるほか、設置の際に工事を行わなければならないケースもあります。
ポット(ピッチャー)型
ポットにろ過装置が備わっており、水を注ぐだけで浄水をためておくことができるタイプです。持ち運びできるので使い勝手がよく、必要な量だけ浄水してそのまま保存できます。ただし、浄水に時間がかかり、浄水能力は他に比べて劣ります。また、ポット内に長時間ためていると雑菌が繁殖してしまうおそれがあるので注意が必要です。
サーバー型
給水栓に連結させて自動給水が行えるサーバー型浄水器は、サーバーの中のタンクに水道水を浄化した水がたまる仕組みになっています。カートリッジの寿命が長く、交換回数が少ないのが特徴です。
浄水器と整水器の違い
「整水器」とは、浄化した水から電解水素水・酸性水・浄水を生成できる機器です。電解水素水はアルカリイオン水とも呼ばれ、「胃腸症状の改善効果が期待できる」と言われています。整水器は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」によって医療用物質生成器に分類され、家庭用医療機器として扱われます。
浄水器の普及率について
一般社団法人浄水器協会が発表した「浄水器・浄水シャワーに関する調査結果2019」によると、主要7都市における浄水器の設置状況は47.3%にのぼります。この数値は2003年から2017年における過去の調査の中で、最も高い数値となっています。
浄水器を使うメリットは?
ここからは、浄水器にはどのようなメリットがあるのかについて見ていきましょう。
より安全な水を飲むことができる
日本は世界でもトップクラスの浄水技術を誇っており、水道水はそのまま飲めるほど「きれいで安全」と言われています。しかし、ごく微量ではあるものの水道水に含まれる成分と塩素が反応してできるトリハロメタンという発がん性物質が含まれています。また、水が各家庭に届くまでに水道管のサビや汚れが水に混ざってしまうおそれもあるでしょう。
こうした不安を解消するうえでは、水に含まれている不純物を取り除くための浄水器が大きな役割を果たしてくれます。
水道水独特の匂いを除去できる
水道水にはカルキ臭などの独特な匂いがあります。このカルキ臭が苦手で水道水が飲めないという方も少なくありません。浄水器を使用することで、これらの嫌な匂いの原因となる不純物を取り除くことが可能です。
素材の栄養が失われるのを防ぐ
料理をする際、ほとんどの方が野菜などの食材を水道水で洗うでしょう。通常の水道水には水の殺菌を目的とした塩素が含まれていますが、この塩素によって食材のビタミンB1やビタミンCが壊されてしまうことがさまざまな研究によってわかっています。浄水器の使用は、食物の栄養を守ることにもつながるでしょう。
肌を乾燥から守る
水道水に含まれる塩素によって、肌や髪のたんぱく質が酸化し、ダメージを受けやすくなります。これによって皮膚のバリア機能の低下を招き、肌荒れにつながるおそれも。慢性皮膚炎やアトピーなどに悩んでいる方は、浄水器の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
浄水器に使われる「ろ材」のタイプについて紹介
活性炭
活性炭は消臭剤にも使用されるため、「見たことがある」という方も多いでしょう。石炭やヤシ殻などを高温で焼いて作られる活性炭には、目には見えない小さな孔(微細孔)が無数にあるのが特徴。水に含まれる不純物をこの孔に閉じ込めることで浄水能力を発揮します。活性炭はカルキ臭・カビ臭・残留塩素・トリハロメタン・農薬などを除去可能で、他のろ過材と組み合わせて使われるのが一般的です。
中空糸膜
中空糸膜(ちゅうくうしまく)とは0.4~0.01ミクロンほどの微細な孔が無数に開いているストロー上の繊維を束にしたものを指します。中空糸膜を使用すると、カビ・鉄さび・濁り・一般細菌などを除去することが可能です。現在販売されている浄水器は、この中空糸膜と活性炭を組み合わせているものが一般的となっています。活性炭や中空糸膜ではミネラル成分が除去されないため、水のおいしさを保つことができます。
セラミック
セラミックの壁に開いている微細な孔を通すことで水に含まれる不純物を取り除くことができます。不純物の除去能力は中空糸膜と同程度ですが、熱や薬品に強いというのがセラミックの特徴です。しかし、中空糸膜に比べて表面積が大きくできないため、目詰まりを起こしやすい点がデメリットと言えるでしょう。
逆浸透膜(ROフィルター)
0.0001ミクロンという超微細孔の空いている浸透膜を使用することで水分子だけを通し、きれいな水と不純物が混ざった水に分離することが可能で、海水を淡水にする目的や医療用などでも使用されています。分子レベルの不純物まで除去できる逆浸透膜タイプは、ろ材の中でも性能が秀でていると言えます。
まずは浄水器の基礎を押さえ、フィルターのタイプを見極めましょう
日本の水道水はそのままでも飲めるほどきれいと言われていますが、より安全な水、よりおいしい水にこだわりたい方は、浄水器を取り入れてみてはいかがでしょうか。浄水器は、機器の形態や使用されているフィルターによって性能が異なります。
安さや手軽さだけはなく、「性能の高いものを選びたい」「身体にいいものを選びたい」という方は、除去性能が高い逆浸透膜フィルター内蔵の浄水器がおすすめです。一般的なものはミネラルも一緒に除去してしまうので、天然ミネラルを添加できる逆浸透膜浄水器を選んでみましょう。